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「OSMIA」開発者インタビュー。フィンランドの自然を再現した、サウナ専用アロマが完成するまで

フィンランド発の人気のフレグランスブランド「OSMIA」(オスミア)。白樺や松葉など自然の中にある香りをテーマに作られた製品は、絶対的なオリジナリティと品質の高さから世界中の人々に愛されています。OSMIAの原点と言えるのが、サウナ専用アロマオイル。Sauna Camp.はOSMIA製アロマの自然な香りに魅せられ、イベントやプライベートで長く愛用してきました。あまりの素晴らしさに「日本のテントサウナユーザーに使ってもらいたい」と考えるようになり、ラブコールを送り続けた結果、日本の正規販売代理店となることが決定。そこでOSMIA社の方々にインタビューを実施。OSMIA発起人でありすべてのフレグランスを開発を手がけている科学者エーロさんの、ものづくり哲学についてお話を伺いました。

自然の香りを科学するブランド「OSMIA」

OSMIAは約30年前、自然愛好家の化学者Eero Vanttinen(エーロ・ヴァンティネン)氏によって設立されたフレグランスブランド。40種類を超えるオリジナルフレグランスはいずれもフィンランドの自然をモチーフに作られており、150以上ある製品の全てがフィンランド国内で製造されています。現在では国内外に熱狂的なファンを持つOSMIAというブランドは、一人の自然を愛する少年から生まれました。

OSMIA設立者のエーロ・ヴァンティネンさん

1950年代後半、フィンランド西部の小さな村で育ったエーロさんは、10歳〜15歳の頃から植物や花の香りに強い興味を抱くようになり、独学で知識を身につけていきました。大学生になると、自宅でオリジナルのサウナ用アロマオイルをハンドクラフトするようになります。これが地元の市場やギフトショップで大好評。当時は製品を自転車のカゴに入れて売り回ったそうです。エーロさんは次々と新しい香りを生み出し続けながら勉学に励み、最終的には化学の博士号を取得します。1989年には事業所と工場での生産体制を構え、本格的にブランドをスタート。確かな化学知識と自然への深い造詣から生まれたOSMIA製品は、フィンランド国内のみならず世界中で人気を博すようになりました。近年ではヘルシンキの人気施設「LOYLY」や、東京神田「サウナラボ」でも、OSMIAの商品が採用されています。

OSMIAとSauna Camp.

Sauna Camp.がOSMIAと出会ったのは、2018年頃。フィンランド旅行から帰ってきたマグ万平さんから「素晴らしい香りのサウナアロマと出逢った」と連絡を受け、マルシンスパを訪れて体験しました。小瓶に入った白樺のアロマオイルの蓋をあけた瞬間、森の爽やかな香りがふわっと広がり、あまりの素晴らしさに言葉を失ったのを覚えています。他のサウナアロマにあるようなケミカル的なキツさが一切なく、スッと身体になじむような自然な香り。心がホッとするようなやわらかい香り。ぼくらはたった一呼吸で、OSMIAのアロマに魅せられてしまいました。

それ以来ぼくらは、イベントがあると必ずOSMIAのアロマを使用するようになりました。NF × Sauna Camp. in 森、道、市場2019」ではOSMIAの香りを9種類体験できる企画を実施。体験したお客さんからは「サウナに抱いていたイメージが変わってしまうくらい、素晴らしい香りだった」と大好評でした。OSMIAのアロマはテントサウナの定番アイテムになると確信したぼくらは、OSMIA社へラブコールを送りました。OSMIAのアロマをテントサウナユーザーに使ってもらいたい、サウナアロマの代名詞にしたいと伝えたところ「日本の愛好家にOSMIAをぜひ広めてほしい」と返答をいただき、日本の正規販売代理店となることが決定。日本版のパッケージデザインを共に行い、サウナアロマをリリースすることになりました。

OSMIA社インタビュー

右からエーロさん(化学者、調香師、オスミア設立者)、アンネさん( マーケティング&エクスポート・ディレクター)、パシさん(マーケティング&エクスポート・ディレクター)。OSMIAのブランドヒストリーやものづくりの姿勢について、お話を伺いました。

ーーーOSMIAの発起人であるエーロさん​が最初に開発したのはサウナアロマだったと伺いました。香水やシャンプーではなく、なぜサウナアロマだったのでしょうか?

大学で化学を学んでいたエーロにとって、香りの調合は自身の専門知識を活かせるものであり、フレグランス作りを行うのはとても自然なことでした。 開発を始めた当時、フィンランド国内に流通していたサウナ用アロマオイルはどれも品質が悪く、自然を想起させてくれるよう良い香りのものはありませんでした。そこでエーロは、原材料のコストや制作期間などを度外視して、フィンランドの森や自然まつわる「良い香り」を再構築してみたいと考えたのです。 1つの香りを作るのに、数年かかることもありました。

ーーー当時サウナアロマはフィンランドの人にとって目新しいものだったのでしょうか?​

そうですね、1980〜90年頃はそうだったと思います。 フィンランド人はできるだけシンプルで自然に近いサウナ体験を好む傾向があるため、サウナ​に入っているときにアロマのような人工的なものを加えることに懐疑的で、反対する風潮もありました​。 フィンランドには​人を外見で判断するのではなく「​Naked and Genuine」(裸​、素になったとき​​​​、ホンモノであるかが問われる)という​考え方​が根強く、サウナについても同じように考える人が多かったと言えます。現代においてもこのような考え方は根強く​残っていますが、少しずつ変化も起こっています。特に若い世代のサウナ愛好家は、サウナ体験を​より​豊かなものにしたいと願っており、伝統的なサウナリラクゼーションの概念を広げていきたいと考えていると思います。

化学者であり自然愛好家という一面も持つエーロさん

ーーーエーロさんは科学なアプローチでサウナアロマを開発されましたが、どんな特徴があるのでしょうか?開発段階で苦労したことなどあれば教えてください。

開発当時、エーロはまだ博士号を取得したばかりでした。深い科学的知識を持っていたものの、開発においてはたくさんの困難がありました。特に、白樺の葉など自然界の香りを化学的に分析するのはとても大変だったようです。この分野の研究はフィンランドはおろか国際的にも十分に行われていなかったため、彼は多くの時間を費やし試行錯誤しながら色々な方法を試みました。 また、香水やフレグランスの調合おいては、優れた直感を持っていることがとても重要になります。 エーロの同僚は彼のことを「科学者と芸術家」の両方の素質を持っていると言っています。

ーーー白樺アロマの香りは衝撃的な素晴らしさでした。自然愛好家という背景を聞いて、すごくしっくり来たのを覚えています。

エーロは新しい香りの開発をするにあたり、とても保守的なポリシーを持っています。 新しいトレンドに追随した商品開発や、短期的な成功や売上拡大を目標としていません。私たちはまずお客さまや販売店の皆さんと信頼関係を築くことを大切にしています。また、私たちは「伝統」と「自然」にできるだけ忠実にいられるよう心がけています。サウナ愛好家やフィンランド人は、サウナに入ることによって安らぎを得たいと感じているからです。

ーーーサウナアロマの香りや原材料を選ぶとき、何か基準にしていることなどがありますか?

やはり「伝統」と「自然」という視点を何よりも大切にしています。オスミア商品は、子供の頃の着飾ることのない、心から楽しんでいた「NAKED」(裸で本物)な思い出、体験を想起させるものなのです。

その一方で、新しいアロマの開発にもチャレンジしています。近年、サウナの健康的効果が証明されるようになりました。伝統的なリラクゼーション効果だけでなく、科学的効果を理解した上で「ハニー・ハーブ」、「ハニー・レモン」などといった新商品を開発しました。これらの新しいアロマは従来のサウナ体験をよりエネルギッシュなものにし、爽快感を提供できるようになりました。ですが、全ての香りはハニーや植物など自然界に由来するものです。「オーシャン・ショア」や「マウンテン・エアー」といった人工的に生み出したものではありません。

ーーーOSMIA製品の特徴、また他社製品と比較した強みを教えてください。

私たちはとても強い濃縮液を使用しています。他社製品の多くはブレンドされた大きなサイズが主流。実用的だとは思いますが、それら商品はフレグランス・デザイナーによって作られたものではなく、イギリス、ドイツ、フランスなどの大手の工業用の香水業者から材料を入手して作られています。「香料学」の観点から考えると賢明な方法だとは思いますが、フィンランドとの繋がりはありません。オスミアの商品はフィンランド文化や自然に深く根付いており、全ての香りは科学的なアプローチによって調合されているのです。

ーーーOSMIAで働く皆さんやフィンランドの方々は製品をどんな風に使っていますか?お気に入りの入り方、使い方などあれば教えてください。

<パシさん(45歳)>
私は45歳以上の世代の、一般的な嗜好の持ち主だと自負しています。都会型の電気ストーブ式サウナに入るときにアロマを使用しますね。それは、香りによって田舎や湖畔にある薪ストーブの本格サウナの代替体験をするためだと言えるでしょう。実際に田舎や別荘で本格的なサウナに入るときは、あまり使っていません。あとは家族のお祝いや真夏のお祭りなどの特別な機会にもアロマを使用します。

<OSMIAショップ常連さん(30歳)>
家にオスミアサウナのアロマを常備していて、いつも使っています。私はOSMIAのサウナアロマの中毒者だと思います(笑)。アロマなしでのサウナは、もはや完全なサウナ体験だとは思えないのです。私たちは時々新しい香りも試して違いを楽しんでいますが、多くの場合は、フィンランドの自然と夏のサウナを思い起こしてくれる伝統的な香りを使用しています。

ーーー日本のサウナ&オスミア製品のファンにメッセージをいただけますか?

日本のサウナ好きの皆さん、こんにちは!オスミアの商品を皆さんに使っていただけて、とても嬉しいです!サウナとは人と社交、交流の機会を与えてくれるものだと思っています。上等で美しい洋服、重要な仕事、大都会での個人主義などの一切を着飾る必要がなく「人間は皆平等」であることを再確認できる場所です。 サウナに入って心を解放をし、あなた自身に戻りましょう。周りの友達と、リラックスできる香りで、健康的に……魂でその「瞬間」を感じましょう。いいサウナに入ったあと、私たちフィンランド人は何世代にもわたってこう言ってきました。

「私は今、この瞬間生まれ変わったかのようだ!」

ーーーなんて素晴らしい言葉!ありがとうございました!

OSMIAのアロマ、体験してみませんか?

インタビューを終えて、ぼくらはより一層、OSMIAのファンになったことはことは言うまでもありません。アロマオイルは、サウナ体験そのものを豊かにしてくれる、いわば魔法のアイテム。しかし、すべてのアロマがそうとは限りません。ケミカル感の強すぎるアロマがむしろサウナの醍醐味を損なってしまっていると感じた経験、サウナ好きなら一度はあると思います。ぼくらはOSMIAの香りに、こうした違和感を抱いたことはありませんでした。自然愛好家の科学者エーロさんが心血を注いだ研究の賜物と言えるのでしょう。

そしてブランド哲学やものづくりの姿勢に、サウナへの深い愛と自然への敬意を強く感じましたサスティナブルであること、素材や生産方法へのこだわり、環境への配慮。これらは香りに直接作用するわけではありませんが、巡り巡ってサウナの「気持ちいい」に直結する要素なのだと思います。気持ちいいコンセプトで作られた製品って、使ってみるとやっぱり気持ちいいものです。

日本のサウナ文化において、アロマの香りは施設が選んだものを受け身で体験するのが主流でした。しかしプライベートなテントサウナなら、自分で好みのアロマを選ぶことができます。ぜひエーロさんが長年かけて考案した素晴らしい香りの数々を、テントサウナで体験してみてください。雄大なフィンランドの自然が、まぶたの裏に浮かぶかもしれません。

そして、サウナからあがったあなたは、きっとこう感じるはずです。

“Now, I feel like a new human being”

「私は今、この瞬間生まれ変わったかのようだ!」

OSMIA販売ページ
【OSMIA】サウナアロマ - Vihta / KOIVU(白樺)
【OSMIA】サウナアロマ - Eucalyptus(ユーカリ)
【OSMIA】サウナアロマ - Juniper berry(ジュニパーベリー)
【OSMIA】サウナアロマ - Sandalwood(白檀)
【OSMIA】サウナアロマ - SmokeSauna(スモークサウナ)

<Special Thanks>
Sauna Camp.がOSMIA社とパートナーシップを結ぶことができたのは、ユキコさんという友人のおかげでした。2019年頃、イベントでどうしてもOSMIAのアロマを使いたかったぼくらは、なんとか日本へ届けて欲しいとOSMIA社へメールで直談判しました。その際にOSMIA社から「彼女から分けてもらったらどう?」と紹介してもらったのが、ユキコさんでした。ユキコさんはフィンランドで同じようにOSMIAのアロマの香りに惚れ込み、日本へ持って帰っていたサウナ愛好家。そんなご縁でご連絡したのですが、いつしか本題はどこへやら、サウナの話ですっかり意気投合。住んでいる国が違うので直接はお会いできないのですが、サウナ情報を定期的に交換する間柄となりました。Sauna Camp.で本格的にOSMIAを販売したいと決心した時も、まっさきにユキコさんへ相談しました。今回のインタビューや輸入の一部を手伝ってもらっています。ユキコさん、本当にありがとうございます!またサウナと宇宙の話をしましょう!

<Special Thanks2>
OSMIAの方々の撮影は、フィンランド在住のフォトグラファーである原田智香子さんにお願いしました。現地を訪ねてインタビューや撮影をしたかったのですが、新型コロナウイルス感染拡大が進む2021年、フィンランド訪問は叶いませんでした。原田さんは、友人の小林あやなさんにご紹介いただきました。現地訪問はできませんでしたが、代わりに素晴らしいフォトグラファーと出会うことができて感謝に尽きません。ありがとうございました。

Text / Sauna Camp. , Yukiko Oyama
Photo / Chikako Harada