fbpx

岩田リョウコ&清水みさとの テントサウナで逢いましょう vol.06 Retreat Sauna AMAMI 水谷さん

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナ大好き女優・清水みさとさんによる、MORZHオーナーズインタビュー企画『テントサウナで逢いましょう』。全国津々浦々でテントサウナ「MORZH」を愛好するオーナーさんを訪ねてお話を伺います。

一期一会のサウナ旅。第6回目は、奄美大島の離島、加計呂麻島でテントサウナを盛り上げている、Retreat Sauna AMAMIの水谷さんを訪ねます。

自然豊かな加計呂麻島はリトリートプログラムが人気で、癒しを求めて多くの方が訪れます。サウナを愛好する水谷さんは、リトリートプログラムとテントサウナは間違いなく相性が良いと確信し、MORZHをプログラムの一部に取り入れて参加者や講師を次々とサウナのとりこにしているそうです。

地域の魅力とテントサウナをマッチングさせ、需要の種を蒔き、事業を育てている水谷さん、かなりコアなサウナーで最高でした!(SaunaCamp.)

東京から1,700kmの離島でテントサウナ!

ご無沙汰しています、岩田リョウコです。前回、大雪の長野県上松町に訪ねて行ってから2
年ぶりの『テントサウナで逢いましょう』です。

2024年、年の瀬にいつものメンバーであるみさとちゃん、わたし、カメラマンの添ちゃん、そして今回は我々のボスであるSaunaCamp.の大西さんと兼康さんも参加のフルメンバー取材。

向かったのは、鹿児島県。でも鹿児島は鹿児島でも、奄美大島のさらに先の「加計呂麻島(かけろまじま)」。

東京からは約1,700キロ。この連載が始まって一番遠いテントサウナ訪問です。

加計呂麻島は、奄美大島の南端からフェリーで20分ほど行ったところにある人口1,000人ほどの島。テントサウナの取材では毎度のことですが、現地へ行って感動したいので事前の写真や情報はできるだけシャットアウトして今回も向かいます。その我慢のおかげでフェリーに乗った時からワクワクが止まりません。

海は青いグラスに入った水のように、海の中が全部見渡せるほど透き通っていて、船が進む先には「無人島かな?降り立ったらどんな感じだろう?」と思いを馳せてしまうような島ばかり。

加計呂麻島の港に着くと、待っていてくれたのは今回のMORZHオーナー、水谷淳一さん。

Retreat Sauna AMAMI主催の水谷さん。加計呂麻島で行われるリトリートプログラムにテントサウナを取り入れ、参加者をサウナの世界に惹き込みまくっている。

水谷さんの車で海岸沿いを車で走っている時に、砂浜に赤と青のMORZHが立っているのが見えました。

この美しすぎる海が水風呂になるのか……贅沢すぎる!と思いつつ、この日の宿で、先ほど見えたテントサウナが置いてある「海宿5マイル」に到着。

ここのお部屋は、すべて目の前が海。3歩も歩けば、目の前に大きな青い海が広がる絶景です。贅沢の極み。

海が大好きな兼康さんは、着いてすぐにシュノーケルをつけて海へダイブ。水の透明度と魚の多さにニコニコでした。

島の人たちがご挨拶にきてくれて、水谷さんのMORZHをみんなで見学。

手前の2段ベンチは、知人に依頼してピッタリのサイズになるように手作りしてもらったといいます。奥のベンチは高めの1段です。足元の温度が低くなるテントサウナを熟知した人の設定ですね。

コロナ期間中に日本中のアウトドアサウナを回って研究を重ねた水谷さんのセッティングは、語らずとも本人の嗜好がわかるほど洗練されていた

床面に敷き詰められたすのこは、水谷さんが「裸足で入るほうが気持ちいいと思って」と設置したもの。テント内はアウトドアだけど清潔感があって、機能的かつ、効率よくコーディネートされています。ストーブの向きも含め、いろいろ研究してたどり着いたんだろうなと思います。

ひとつ、気になることがありました。窓が絶景の海の方に向いていないんです。水谷さん、間違えちゃったのかな?と思って聞いてみると、これは意図的にこうしているそうです。

「サウナ室は瞑想するような形であえて視界をシャットダウンしてます。外へ出た時にぱぁっと海景色が広がるのが好きなんです」と水谷さん。さすが、計算されつくされています。

さて、そんな研究熱心で、テントサウナを知り尽くした水谷さんですが、初めからここでテントサウナ屋さんをしているわけではないんです。聞けば水谷さん、なんと東京人。

なぜ都会っ子の水谷さんがこの加計呂麻島にやってきたのか、そしてこの島でテントサウナをどう活用しているのかを、奥様の里佳さんも加わって、みんなでお話を聞きました。

里佳さんは、愛染の作品を手掛ける「日月星草」を主催する藍染作家。加計呂麻島で自ら琉球藍を育て、作品を作っている。

レンタルは苦戦、リトリートプログラムにして初めて魅力が伝わった

リョウコ「もともとサウナはお好きだったんですか?」

水谷さん「20代のころからサウナが好きで東京の銭湯に通っていました。加計呂麻に移住したのが11年前。自然が好きなので何度か来たことはあったんですが、移住までは考えていない……という感じでした。でもあるとき体を壊して、療養しなきゃいけなくなってしまいました。その時にたまたま友人が加計呂麻に家を1軒借りていたので、そこなら長期滞在できるってことで半年くらい療養で滞在していたんです。するとみるみる元気になっていきまして。相性の良さを感じて、移住を決めました」

みさと「それで加計呂麻でテントサウナを?」

水谷さん「3年前に友人からテントサウナが流行ってると聞き、ビーチでできるからアリかもなと思ったのがきっかけです。妻は藍染の仕事をやっていて、藍染の葉は漢方薬にもなるし、ロウリュに使えたら相性が良いかもなとか想像してました。

いくつかの場所でテントサウナを体験してみて、一番体感が良かったMORZHを買って、テントサウナのレンタル屋さんを立ち上げました。お客さんが少なくなる冬場、加計呂麻島の宿にテントサウナを貸し出せば、お客さんが増えて喜ばれるかなと思いまして。

でもいざやってみたら、テントサウナのことを全然知らない宿にポンと貸し出しても、なかなかうまく活用されていくイメージがつかなかった。そもそもサウナの楽しみ方が理解されていないし、テントサウナは火を使うので事故も怖かった。結局、僕が火の具合などを見に行かなきゃいけなくなり、丸一日取られてしまっている状況が続いて、これだと事業としては難しいなと感じました。

あれこれ考えていくうち、加計呂麻島には癒しを求めてリトリートプログラム参加のためにやってくる方が多いので、テントサウナのレンタル屋さんという考え方から離れて、サウナを使ったリトリートプログラムをやればいいんじゃないかと考えるようになったんです」

リョウコ「サウナがメインではなくて、ひとつの要素になったわけですね」

水谷さん「そうなんです。この土地の月桃や、伝統的な発酵飲料のミキ、ハーブや薬草をリトリートプログラムを通じて親しんでもらいながら、テントサウナも楽しむという体験の提供が、結果的にとても喜ばれました」

月桃:熱帯や亜熱帯に自生している大きな葉をもつ植物
ミキ:奄美大島で飲まれている伝統的な乳酸発酵飲料

大西「加計呂麻島はリトリートプログラムが人気なんですね」

里佳さん「とても人気です。リトリートのツアーを主催する友人がたくさんいるんですが、加計呂麻島は環境が良いので、よく相談されます。島ならではの体験が何かできないか聞かれた時に、藍染や薬草の体験、それとテントサウナとかできるよって話したら、みなさんとても面白がってくれました。

水谷さん「最初にテントサウナをリトリートに組み込んだのは、奄美伝統の発酵飲料であるミキ作りの権威のような先生のプログラムでした。参加者のみなさんには、私から40分ほどみっちりサウナの授業をしまして。歴史や文化、体験としての素晴らしさ、自然体験であることを理解してもらった上で体験してもらったら、参加者の方も講師の先生も大変感動されていました。すると、うわさが伝わって、別のミキ作りの先生からも“リトリートでテントサウナをやってほしい”と相談がくるようになりました」

加計呂麻島の自然と魅力が、ぜんぶサウナと繋がっていく

大西「ほかにも月桃のワークショップ、薬草のワークショップなどがあって、そこでもテントサウナを提供しているんですよね」

水谷さん「はい、植物に触れるワークショップとサウナは親和性がありますね」

リョウコ「体験した方のレポートを見ると満足度が高いせいか、熱量がすごい。これを読んだ人が受けたくなって、どんどん広がっていくんですね」

里佳さん「薬草のワークショップは、ハーブボール作りから始まりました。自分で薬草を触って、刻んで、香りを確かめることって、すごく尊いものだなあと思っていたので、それを体験してもらえたらと考えました。ハーブボールを包んでいる白い布を藍染にしたら、それもまた体験になっていったんです。そして、ハーブボールや薬草は、そのままテントサウナで使える。どんどん繋がっていって、プログラムが豊かになっていきました」

みさと「繋がり方が都会と違うっていうか、自然派ですね。種まいて、花咲いてっていう感じがしますね」

大西「とにかく相性がいいんでしょうね。加計呂麻島の魅力とサウナが、とても繋がりやすい」

水谷さん「ミキ作りを目的として島に来た方々が、サウナで新しい体験をしていただけると、口コミでどんどん輪が広がっていきます。加計呂麻島の魅力がサウナを通じて広がり、人と人を繋いでくれる。とても幸せな感覚です。この感覚は言葉では伝わらないので、ぜひ来てもらって体験してほしいです」

大西「今後はどんな活動をしていくんですか?」

水谷さん「今はリトリートプログラムをやっている主催者向けに体験を提供していくことをメインとしていますが、落ち着いたら観光で訪れた人や、島の人に向けても魅力を伝えていけたらいいなと思ってますね」

屋号である「Retreat Sauna AMAMI」のTシャツを見せてくれた水谷さん。頼もしい背中!

加計呂麻島の食卓

水谷夫妻のお話とこれからをしっかり聞けたので、5マイルの夕ご飯をいただきました。地元の漁師さんが獲ってきたお魚や、5マイルの畑、島の人からお裾分けしてもらった野菜を化学調味料は使わずに調理しているそうです。

すべて愛が詰まっていて、新鮮で、体に沁みました。おいしかった!

青く光る夜の海とテントサウナ

ご飯を食べた後、寝る前に夜のテントサウナにみんなで入ったんですが、これがまた最高でした。

サウナの気持ちよさ、月桃の香り、そして薪のぬくもり。そして極め付けは、海に入ると、水が青く光っていること。そう、夜光虫です。動けば動くほど、キラキラ青く光って、どんなイルミネーションも敵わない、自然のライティングでした。

そして早朝のサウナ。朝のサウナはいつだって気持ちのいいものですが、大自然の中で、しかもわたしたち以外誰もいない浜辺で入るテントサウナは、神秘的です。

しかも、12月に海に入って気持ちがいいって信じられません。しかも海の水なのに、ベタベタしない。まるで湖みたいです。

水谷さん考案の、海の上に浮いてととのう感覚になれるのも試してみました。自然と一体化……いや、もはや自然に吸い込まれてなくなってしまいそう。気持ちが良すぎます。

大西さんが「サウナは自然と一体化する装置なのに、そもそも一体化する自然が都会にはない!」と言っていたんですが、ここは自然しかない。もはや一体化するためにあるような場所です。

里佳さんが持っているのが、月桃の葉です

ちなみに朝の7時、カヌーも漕いじゃいました。朝カヌーは生まれて初めてです。

すべてが神秘で、すべてが自然で、すべてが優しかった加計呂麻島。わたしたち全員の心を鷲掴みしてくれた場所となりました。

1月にはザトウクジラの群れが来るそうです。加計呂麻島は世界で4箇所しかないザトウクジラと泳げる場所です。水谷さんはザトウクジラの鳴き声を水中マイクで録音して、テントサウナで流すのが好きとのことでした。どこまでも自然派!

来年もまたフルメンバーで、今度は1週間くらい滞在したいです。

Retreat Sauna AMAMI

最新情報は 公式Instagram をチェック
お問合せ:info@amamisauna.com
担当:水谷

Profile

【岩田リョウコ】
兵庫県生まれ名古屋育ち。コロラド大学大学院で日本語教育学を学び2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中の2015年にアメリカで出版した『COFFEE GIVES ME SUPER POWERS 』は、Amazonランキング全米1位のベストセラーに。世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ好きが高じてフィンランド政府観局フィンランドサウナアンバサダーに任命される。著書に『週末フィンランド ちょっと疲れたら一番近いヨーロッパへ』(大和書房)、『HAVE A GOOD SAUNA! 休日ふらりとサウナ旅』(いろは出版)、『エンジョイ! クラフトビール 人生最高の一杯を求めて』(KADOKAWA)、『コーヒーがないといきていけない! 毎日がちょっとだけ変わる楽しみ方』(大和書房)がある。

【清水みさと】
女優。オーストラ・マコンドー所属劇団員。舞台、映画、ラジオなどで幅広く活躍する一方、1日に何度もサウナへ通う「サウナ大好き女優」としても知られる。規格外のサウナ偏愛ぶりは業界でも話題となり、TBS『世界ふしぎ発見!フィンランド、エストニア編』ではミステリーハンターに抜擢される。マイナス20度環境でも躊躇なく雪原に飛び込み、サウナショップでストーブを愛で回すマニアぶりは、SNSを中心に大きな話題となる。冠番組であるラジオ『サウナいこ?』(JFN12局)は、2021年6月現在で放送300回を突破。『サウナイキタイ』のポスターでモデルを務め、『マグ万平の のちほどサウナで』準レギュラーとして頻繁に登場することから、愛好家からは「サウナ界のミューズ」と慕われている。

文章:岩田リョウコ
モデル:清水みさと
写真:添田康平
編集:SaunaCamp.